インタビューvol.5
フォトグラファー・登山家
佐藤 宏樹さん

美しい景色は維持するもの
山岳写真を通じて伝えたい、自然の大切さ


会社員をしながら、約20年趣味の登山を続けているという佐藤 宏樹さん。山で撮った写真をInstagramで発表し続ける中で、環境保護への思いも強くなってきました。そんな佐藤さんが普段意識していることとは?お話を伺いました。

ただ絶景を見ていたいタイプ

いつから山登りをしているのですか?

25歳の頃、「一生に一度は富士山に登りたい」と思って、初登山でいきなり富士山に挑戦しました。もともと水泳やジョギングはしていたので体力に自信はあったのですが、痛い目に合いましたね。今思えば、登山をはじめたきっかけは、ずっと続けられる趣味を持ちたかったからかもしれません。仲間と一緒に山に繰り出すって、お金もそんなに使わないし、楽しそうでしたから。

富士山から登山にハマったのですか?

いえ、実は富士山に登った後は「富士山は遠くから見る山だな」と思ってしまって(笑)。ですが、その後に登った木曽駒ヶ岳で絶景を見ることができ、すっかり山に魅了されました。登山には「力を試す」という楽しみ方もあると思いますが、僕はラクできるならラクして、ただ自然や景色を楽しむ方が好きなんです。

山の写真をInstagramに公開していますね。

親戚が写真館をやっていたので、子どもの頃からカメラは身近にありました。山登りを始めてからは、美しい景色を写真に撮るのも楽しみになり、自然の写真で賞をもらったこともあります。東京に住んでいると気付かないですが、山に行くと「自然と共生しているんだな」って感じますね。

山に行くと「自然と
共生しているんだな」
って感じます。

ナイロンのベタベタは、剥がして再利用

登山の際に心がけているエコ活動はありますか?

山では消費活動をしないようにしています。昔は、山でごはんを作るのも楽しいと思っていましたが、今は単純に登って楽しむだけです。料理をしたら、絶対にゴミが出ますからね。とにかくゴミを出さないというのは心がけています。

登山道具にもこだわりがあるのですか?

私はあまりモノを買わないので、18歳から着ているハードシェルジャケットをいまだに着続けています。長く登山をしているとメーカーの特色もわかってくるので、壊れにくいメーカーを選ぶのもポイントです。テントなどのギアは、きちんとケアすれば長持ちしますよ。

どのようにケアするのでしょうか?

ナイロンは加水分解で劣化するので、一度きれいに剥がしてもう一度コーティングするんです。ザックの裏側も剥がれてベタベタになるので、全部剥がしてしまえばすっきりします。なんでも防水である必要はないですからね。

美しい景色は守らないと消えてしまう

普段の生活で、エコを心がけていますか?

「Green Ponta Action」の「宣言する」の項目は、普段から心がけていることが多いですよ。食べ物は、買った分は責任を持って全部食べるので、捨てることはないですね。「自然にやさしい商品を選ぶ」という意味では、「安いものを買って捨てればいいや」ではなく、吟味して長持ちするメーカーを選んでいます。

環境の変化を身近に意識した経験はありますか?

以前、八丈島の八条富士(以下、写真)に行った時に、ちょうど台風が来ていたんです。大雨で木が倒れて、その後1年以上入れない場所もありました。杉は根が浅く倒れやすいため、一度倒れた場所には根が深い木を植えて、防風林にするという話も聞きました。美しい景色の陰で、それを保全しようと努力している人がいます。台風などの自然災害が増えたのも、CO2による環境の変化が影響していますよね。だから「Pontaの森」をつくることで環境保全につながって、美しい景色をこれからも見続けられるといいなと思います。

八丈島の八条富士にて。
標高854mの低い山なので、
たくさんの植物を
観察できます。

山岳写真を通じて伝えたいことはありますか?

山って自然にあるものだけど、放っておけば美しさが保たれるわけじゃなくて、努力して守っていかないと維持できないですよね。緩やかにでも、一人ひとりができることをやっていかないといけません。恐怖を煽るよりも「この光景ってきれいだよね、だからみんなで守ろうよ」っていう風に、みんなの意識がポジティブな方向にいくといいなと思います。

山の美しさは努力して
守っていかないと維持
できないのだと感じます。