インタビューvol.1
一般社団法人more trees
水谷 伸吉さん

人も森も多様性で豊かになる
「Pontaの森」プロジェクト


Pontaの森」の育成をサポートしてくれるのが、一般社団法人more trees。今回は、事務局長の水谷 伸吉さんにお話を伺いました。

見える部分だけが森じゃない

水谷さんが所属されている、more treesという団体について教えてください。

more treesは、音楽家の坂本龍一が発起人となって2007年に立ち上がった森林保全団体です。私は2007年の立ち上げ当初から参画しました。

水谷さんは、以前は何をされていたのですか?

大学卒業後はメーカーで働いていましたが、退職してインドネシアで植林を行うNPOに転職していました。大学4年の時にマレーシアで植林をするスタディツアーに参加したのですが、その時の光景が忘れられなかったんです。行く前は鬱蒼としたジャングルを想像していたのですが、実際にはかなりの木が伐られていて衝撃を受けました。同時に、森林伐採によって雇用が成り立っている状況も目の当たりにし、一方的に「伐採をやめろ」というのは現実的じゃないと知りました。当時の葛藤が今の仕事につながっています。

more treesはどのような活動をしているのでしょうか?

「森と人がずっとともに生きられる社会を目指す」というのが私たちのビジョンです。これまで私たち人間は自然破壊をしながら経済発展を続けてきましたが、行き過ぎた資本主義やグローバリゼーションを見直さないと、どこかでしっぺ返しが来ます。人間の生活と自然資本がどちらもいい距離感でサステナブルに両立できるライフスタイルを探りながら、森を再生させていくことが必要だと思います。

森を再生するとどんないいことがあるのですか?

一言で言い切れないのが、森のすごさなんです。例えば、CO2を減らす、水源として機能する、土砂災害を防ぐ、木材を供給してくれる。それに、癒しの効果もありますよね。

守備範囲の広さが森の良さなのですね。

「地球温暖化防止」や「気候変動対策」に主眼を置いても森が拠り所になるし、「癒される」というのも森の偉大なところですし。それぞれのニーズに応えてくれるのが、森の奥深さなんです。目に見える部分だけが森じゃないということですよね。

一言で言い切れないのが、
森のすごさなんです。

森と言えるレベルになるには、150年はかかります

「Pontaの森」の取り組みはどのように始まったのですか?

約半年ほど前にロイヤリティ マーケティングさんから相談をいただき検討を始めました。複数の候補地の中から「北海道美幌町」に森をつくることに決めました。

候補地はどのように決まったのですか?

私たちは、北海道から宮崎まで国内の15地域と森林協定を結んでいますが、15地域すべてで植林がすんなりとできるわけではないのです。土地の確保のほかに苗木の調達も問題になります。その土地に適した広葉樹の苗木を調達できるとは限らないんです。さらに、各地に森林組合がありますが、広葉樹を植えたことがなかったり、メンテナンスの経験がないことも多いので、人材育成も同時に進めていかなくてはいけません。

なぜ広葉樹を植えるのですか?これまでよく植えられてきたスギやヒノキじゃダメなのでしょうか?

日本全土で見られるスギやヒノキの森は、戦後の経済復興の中で“早くまっすぐに育つ木”を求めた結果です。最短40〜50年で伐採でき、住宅用の建材に使いやすいので重宝されました。しかしその弊害として、森に多様性がなくなってしまいました。

多様性がなくなるとどうなるのですか?

例えば、スギを狙い撃ちする病害虫が出たら、森は全滅してしまいます。資産運用に例えると、預貯金だけでなく株や債券を買うなど、投資先を分散させることでリスクヘッジをしますが、森も同様です。同じ時期に植えた木ばかりだと、ある世代しか伐採ができないですし、世代や種の多様性がないと、レジリエンス(しなやかに回復する力)に欠けるんです。だから私たちは、複数の種類をミックスして植えたり、植える時期をずらすなどして、多様性のある森づくりをしています。

「Pontaの森」が完成するのはいつですか?

森と言えるレベルになるには100~150年かかります。長い年月をかけて育んでいきながらも、途中で木の一部を伐採し人間の経済活動に採り入れることができれば、森と人間のちょうどよい距離感が生まれ、サステナビリティが担保できます。「Pontaの森」はそのような森づくりをめざしたいと思っています。

美幌町のみなさまの反応はいかがですか?

喜んでいますよ。お店でよく目にする“Ponta”が自分の街で一緒に森づくりをしてくれるなんて思わないですよね。そういう形で着目してもらえるのは、地域全体にとっても誇りになります。「Pontaの森」を機に地域とのつながりが生まれ、定期的に行き来したりと、幅広い交流が生まれるといいですね。

ものを買うことは、投票すること

水谷さんは、環境に対して意識していることはありますか?

私自身はストイックな生活をしているわけではありませんが、「Green Ponta Action」の項目はすべて心がけているつもりです。

他に気をつけていることは?

ものを買う時は、「消費は投票と一緒である」という言葉を意識しています。同じような商品が2つあるとします。一つは原材料や労働者の権利がケアされていて、環境に配慮しながら作られているもの、もう一つはそのような詳細が不明なものだとしたら、前者を選びます。その行為が作り手を応援することになりますし、選ばれなかった企業は淘汰されていきますよね。消費者の行動が変われば製造者も無視できなくなります。消費者の行動一つひとつが、ポジティブな出来事につながります。

ものを買う時は、
「消費は投票と一緒である」
という言葉を
意識しています。

「Green Ponta Action」アプリについてどう思いますか?

エコというと、電気を使わない、水を我慢する、ものを減らすなど、我慢を強いるイメージがありますが、それらは「消費したい」という人間の本能に反しますよね。だけど、このようなアプリを通して取り組むことで、「スコアがもらえるからもう少しがんばってみよう」と気持ちが前向きになり、我慢が楽しみに変わります。誰かのためにもそうですが、自分自身が毎日気軽に楽しく続けられることが大事だと思うので、ぜひ多くの方に使ってもらいたいと思います。

「Pontaの森」を機に、
幅広い交流が
生まれるといいですね。